「字が汚い」は成績優秀者の共通点?

長く塾で指導をしていると、よく受けるご相談のひとつに、「現在小学生の我が子の字が汚すぎて心配だ」という悩みがあります。そしてこういうご相談の場合、対象となる子どもは99%男の子です。さらに小5、6で中学受験をするご家庭がとても多いです。
もちろん、純粋に読みづらいとかバランスが悪すぎる、という字を書く子も多いです。ただ、偏差値60を超えてくるような成績優秀者と言われる子達の「汚い」字には、ある一定の共通点があります。

それは、「若干ななめ」であることです。たいがい右利きであれば右斜め上に傾いていることが多いのです。もちろん、そうでなく純粋に読めない字を書く子もいますが、多くは少し傾いた字を書きます。

下に実際のノートをご紹介いたします。これは実際に指導した子のひとりが小学5年生に書いていたノート(理科)です。ちなみに、本人も自分の字で認識できないものが2割くらいあります。

なかなか破壊力があるノートですね(笑)

そして、こういった子達を実際に指導していると、次なる共通点が見えてきます。それは、ノートをうまく板書(ホワイトボードや黒板などに書いてあるもの)通りに書けない、ということです。思わず空間認識能力を疑ってしまいそうですが、そういったものになんら問題はありません。むしろ、非常に高いことが多いのです。

成績もよく、空間認識能力も高いとなると一体何が原因なのでしょうか。

ちなみに、私はこれを丁寧な見やすい字に矯正したことはありません。病気でもなんでもないのですが、成長の過程で必ず治っていきます。
これは、「思考速度に手が追いついていない」ことが理由です。そして、「思考と筆記の速度調整がうまくできない(する気もない)」ことが簡単に治せない理由になります。特に小学生だとこういうことがよくあります。女子は速度の差異をうまく調整して、見やすいノートを書くのですが、男子はそんな器用なことはできません。ですから、字ばかりが前のめりになってしまうのです。多くが右上に傾くのはそのためです。

「では、どうやったら治るのか?」

と言われるのですが、個人的にはまったく修正する必要はないと思います。「放置」です。もちろん字が読みやすいに越したことはないし、無理やり治せないこともありませんが、せっかくの超速思考速度を下げてしまうことになりかねないので、できればそのままにしましょう。子どもも、さすがに入試本番で読めない字を書くことはしませんので、あまり心配する必要はありません。

たしかに、この字のせいでテストの点数が悪くなることはあります。どうしても、自分の字のせいで計算を間違えてしまうとか、テストでもそのような字を書いてしまう場合は第三者である、塾の先生や学校の先生などに話してもらった方が良いでしょう。保護者の方ですと、どうしても感情が先立ってしまいます。言ってもなかなか治るものでもないので、「何回言わすの!」というセリフが出てきてしまいます。こういったことで親子関係をこじらすことはよくありません。

ノートの持ち主エピソード

ちなみに、ノートの持ち主は、小学4年生から大手塾に通い始めました。そこでは毎月、その月で習った範囲が出題範囲の実力テストがあります。忘れもしない小学4年生の実力テストでのことです。たぶんできた、という彼のやや弱気な態度に一抹の不安をかかえながら見た結果は恐ろしいものでした。

「計算問題全滅」

決してオーバーな言い方ではなく、「全滅」です。全壊、全滅、壊滅、滅失…適切な言葉が見当たらないくらい、計算問題はすべて間違えておりました。もう何年も昔のことなのに今だに鮮明に覚えています。後にも先にもこの一回だけでしたが、保護者はこの結果を見て心臓が止まったのではないかと思ったほどです。

本人に聞くと、まったく緊張はしていなかったとのこと。問題用紙の計算跡を見るといつも通りの字。ただ、よくよく見ると、6と0、4と9(!?)、7と9を見間違えて計算をしていたことが分かりました。筆算はまっすぐ下に連ねておらず、右下へどんどんずれていき、どこへ数字を下ろしていけばよいか当の本人以外はまったく分からないものでしたが、どうやらそこは間違えておりませんでした(笑)その後、少しずつ年齢とともに字を読み間違えるということは減っていきましたが、0にはなりません。

5年生になっても、漢字などは読めない状態です。「体」を書かせるとどう見ても「人」と「本」です。
ちなみに、彼の実力は偏差値60は軽く超えるものでした。字がちょっとアレなので(笑)、テストはそれよりも随分低く出ていました。当然保護者の方にそれを言っても半信半疑です。
「またぁ~先生~」とあしらわれる日々でした。
保護者の方には絶対に字の汚さには触れないでほしい、とお願いしてきました。
彼は結局小6になってから、多少読める字になりました。間違いも随分減っていきました。脳の処理が追い付いてきたのだと思います。最終的にはわりと余裕をもって東海中学へ合格していきました。

決して対処しない、ということではなく、きちんと観察をしていけば子どもの成長が見えます。見えれば、対処をしなくてはならないのか、しばらく様子を見ていった方が良いのかが分かります。判断に困ったら通っている塾の先生に聞いてみましょう。