要約力を身につけると読解力が上がる???
「要約力を身につけることで、読解力が身につく」とは世間でよく言われることです。
本当にそうでしょうか。
読めないのに、要約などできるのでしょうか。
読めるからまとめられるのではないでしょうか。
つまり、読解力があるから要約力が身につくというのが普通の考えではないでしょうか。
今回は、そのロジックを解き明かし、要約で困っている人に要約の具体的な方法を伝えたいと思います。
まずは、要約力についてためしにインターネットで調べてみました。
すると、出ました、コピー&ペーストの嵐。ちょっとびっくりするくらい同じようなことしか書かれていないことに驚きます。しかも、まったく実用的でない内容です。現場で指導していない人間が書くとこうなるのかなと思いました。もしかしたら、そのワードで検索する人が多いから、というSEO対策のような本末転倒なものなのかもしれません。
書いてあることの最大公約数を簡単にまとめてみました。
要約力をつけるためには、
〇言いかえをしてみる
〇新聞の内容をまとめる
〇映画の内容をまとめる
〇話を端的に伝える練習をする…
などです。まだまだありましたが、このくらいにしておきます。
これらは端的にまとめると「要約」する、ということになります。
…?
つまり、要約力を身につけるためには、要約をするのが良い、ということでしょうか。
野球ができるようになるためには野球をやるのが良いというのと同じような妙な文章です。
私が見る限りこれらはすべて、「要約がある程度できるようになってからやること」なんです。
驚くべきことに、「要約」をどのようにしてやるのかの具体的方法がまったく書かれていないのです。
これでは、要約の力を身につけようと思って情報を探している子達も間違えた情報で苦しんでしまうことになります。
それでいろいろ考えましたが、今まで企業秘密にしていた部分を今回公開することにしました。
実際に現場で授業をしていると、「要約」ができる子が皆無に等しいです。日常生活で要約を使わないのはもちろん、頭の中でロジックが整理できていないのでしょう。要約をさせてみると、言葉が違っているだけで同じ意味である筆者の主張をただ書き連ねる子が多いのです。それだけならまだしも、短い要約なのに、主張の具体例を長々と書いてしまう子もいます。
実は、私自身が学生のときに国語がとても苦手でした。今風に言えば黒歴史です。得意な科目と比較するとその偏差値の差がウン十となることも珍しくありませんでした。当然、授業がスピードアップしたり、難しくなったりすると、まったくついていけませんでした。授業の予習をしようと参考書や教科書を読んでも、表層的な部分しか読めず、ロジックの応用がまったくききません。だから、原理原則からさまざまな方向へ応用することができず、一事例ごとに解き方を覚えていました。やがてどの科目も点数が下降の一途をたどるようになりました。このときはとても悩みました。当時は、国語の解法というものが完全に確立されておらず、きちんと教えられる人が少なかったのです。今思い出しても苦しかったですね。ところがあるきっかけで、国語にもきちんとした解法があると知ったのです。このときに受けた大きな衝撃を今でも鮮明に覚えています。足のつま先から脳天まで電流が走りました。これだと思い、必死で勉強してそれらのメソッドを身につけました。それができると、あとは学習すればするだけ点が上がりました。あれはうれしかったですね。今振り返ってみても、「要約」する練習は読解する際に非常に役に立ちました。勉強するうえで特に注意したのは、文章を読むうえでとても大切な「語彙力」をたくさん身につけること、感覚に頼らず、決まった読み方解き方を常に新しい文章でも実行すること、そして「要約」の練習をすることでした。特に「要約」は、練習すればするほど上達し、長文を読んでも筆者の主張を見失わない確かな読解力を身につけるのにも役立ちました。要約の延長上に小論文があるため、小論文についても確かな実力がつきます。
黒歴史について長々と話してしまいました。
話をもとに戻しましょう。
ここまで書くと、要約ができれば読解力が身につく!と言っているように聞こえてしまいますがそうではありません。あくまで、読解力があるから要約ができるというのが本来の私の意見です。
しかし、要約のメソッドを知ると、文章の読み方が変わり結果として読解力の向上に貢献するのです。実際に指導をしていて確かに言えることです。だからこそ、読解力がなかなかつかないと困っている方へ要約のメソッドを伝えることで、少しでも前に進めるのでは、と思うのです。
もちろん、しつこいですが、要約力をつけると読解力の手助けにはなりますが、あくまで読む型を覚えるメソッドですので、読解力についてはきちんとそれを身につけるべく学習をするのが良いでしょう。
要約の具体的方法
前提として、「要約文」は筆者の主張をまとめたものであることをお知りおきください。(長い要約では状況が少し変わります)
では、その主張をまとめ上げるために必要なのは、
①具体例や比喩を消す
②否定肯定構文は否定文を消す
③文章の最初と最後は要チェック
④「しかし」「つまり」の前は消す
⑤重なる内容の主張は、片方を消す
です。
①は、そもそも論説文というのは、主張に具体例や比喩を加えて伝わりやすくしたものです。逆を言えば、文章から具体例や比喩を抜くと主張が残るということです。
これを練習していくと、長文から主張を取り出すことが容易になります。
②は、「Aではなく、Bである」という構文ですが、Bを明確にするための技法なので、Aではなくという否定部分は消してもよいということになります。私の敬愛してやまない現代国語講師宗慶二先生は「AではなくBだ構文」と言っています(笑)とってもわかりやすいです。
③については、文章の型の話で、最初に問題提起をしたり、おおまかに結論を言ってその後具体例を並べ、最後にまた結論を言うという型の文章では、最初と最後に筆者の主張があり、そこを押さえるだけでも要約文が書けてしまうことがあるくらいとても有用なメソッドになります。
④「しかし」は最重要接続詞です。「一般的にはこう言われている。しかし、私の意見は違う」といったニュアンスで使われるときの「しかし」の後ろには筆者の意見が必ず来ます。ですから前の部分は筆者によって斬られる、つまり必要ない部分になります。「つまり」は言わずもがな、これまでの内容をまとめるため、それより前の部分は同様に必要ありません。
⑤主張のみをあぶりだした後は、それらをまとめて指定字数に収めなければなりません。このときに必要なのがダブりを消すことです。同じ内容の主張がならんでいればどちらかを消す必要があります。そのときの基準として、+α書かれている方を残し、そうでない方を消します。
これらはビジネスシーンや日常生活でもとても役に立ちます。的確に、端的に、論理的に相手に伝える練習についてもぜひこのメソッドを使用していただきたいものです。ただし、あくまでメソッドを知るだけでは実力や点数にはつながりません。コーヒーを、時間をかけてドリップするがの如く丁寧にじっくりと問題演習に取り組んでいくことではじめて「要約力」という力が身につくのです。「要約力」が身についてくれば、文章を読む目ができて読解力もあわせて上がり、読解力が上がればさらに要約も上達する、そんな相互作用を、読解力や要約力で悩んでいる人にこそぜひ経験してほしいと思っています。