効果的な読み聞かせについて
今回のお話は、発達教育学上、小学校中低学年に対象が絞られてしまいますが、とても重要なお話です。
ただ、世間にそれほど知られていない「子どもへの読み聞かせ」についてのことでもあります。
まず、なぜ「読み聞かせ」なのでしょうか。
それは、子どもの能力が飛躍的に伸びることと大きく関係するからです。
小学校中低学年の子どもの脳はまだ完全にできあがっていません。それ故に、「必要だ」と脳が判断した場合、とんでもない速さでその部分を成長させていきます。例えば、幼少期に音をよく聞く耳に関連した部分がどんどん発達していき、物を見る目に関連した神経が発達していく、というように、よく使う部分を発達させていくのです。
逆にあまり使わない部分に関連した神経は発達しなくなります。
いわば、神経を道路とたとえるなら、よく使う神経を幹線道路と言ってもよいでしょう。こうした幹線道路はもっと便利に、もっとスピーディに使えるよう、拡幅工事を行います。つまり能力を自分で勝手に底上げしていくのです。
反対にあまり使わない農道のような神経はどんどん壊されていきます。頭の中に何本大きな道路ができるか、もしくは、どれだけ太い幹線道路ができるか、というのがその人の能力となって後々現れてきます。
そして、「読み聞かせ」は言語能力という道路を大幅に拡幅する行為なのです。
ただし、親がなんとなく本を読んで子どもに聞かせするのではありません。子どもの能力を上げる仕掛けが必要なのです。具体的には、以下の3つの力を底上げしていきます。
ひとつ目は、「自分で考える力(思考力)」
ふたつ目は、「読解力」
みっつ目は、「意見を言う力(表現力)」です。
社会で生き抜くための必要な力をここで育むことができます。幼少期にこれらの力を持った子は、日常のいろいろなことから学ぶことを覚えていきます。どんどん自分で考え、行動できるようになります。

では、いったいどんな仕掛けなのでしょうか。
結論から先に言ってしまうとそれは、「絵本を読みながら、親子間でやりとりをする」ことです。
これは言語研究や幼児教育がさかんなアメリカで生まれた読み聞かせの手法です。
実際に、自己主張が得意なアメリカ人の幼児教育ではやりとりを頻繁に行います。それは、彼らが、本を好きになってもらいたい、豊かな感性を養いたい、といった目的が主ではなく、ことばを教えるために絵本を読み聞かせるという目的をはっきりと持っているからです。
そして、家庭だけでなく学校においても個人が言葉を使って発表をする場面が数多くあります。だから欧米人は自分の考えをきちんと相手に伝える能力に長けているのです。
「ことばの力」「考える力」「伝える力」は本来、受験勉強の一環として一朝一夕で身につけられるものではありません。
小さな時から自分で考え、それを伝える経験を積むことで累積的に身についていくのです。また、幼少期は人の話を聞く、ということがまだうまくできません。その時期に、親からのいろいろな質問に対して言語脳をフル活用して考える経験をさせることで、何事も言葉を使って考える習慣が身に付きます。算数や理科の公式や現象もイメージで分かったつもりになるのではなく、言語で正確に把握することで応用力が飛躍的につきます。
そして大切なのがタイミング。何事も素直に聞いてくれるこの時期だからこそ、やる必要があるのです。
それでは、具体的にどのようなやりとりをしていけばよいのでしょうか。
まず、物語を読み終える、読み聞かせるという目的を取り払ってください。
目的は、ことばを教え、考えさせることです。
物語は途中で終わってもよいのです。子どもが続きを聞きたがったら読んであげればよい、くらいの意識でやっていくとよいでしょう。
例えば「3びきのこぶた」を読んだとします。
「そんなの、もっと小さいときに読んでしまっているよ。」と思った方、もちろん、なんでも良いのですが子どもがよく知っていて安心してやりとりができる物語の方が良いのです。
こぶたの3兄弟が、それぞれの家を作り、最初の2匹はオオカミに食べられてしまったものの、最後の1匹はレンガの家でオオカミの難を逃れ、オオカミを逆にやっつけるという話です。
最初の段階で、
「わらで家を作ることについてどう思う?」
「どうしてそう思うの?」
という問いかけをするのです。
1番目の問いは、自分の考えを言葉としてださせるための問いで、2番目の問いはその考えを順序立てて整理し、より深掘りさせるための問いです。
このときに気をつけなければならないのは、どんな答えが返ってきても決して否定せずに丁寧に承認してあげることです。
こうした問いかけをされながら絵本を読むことが習慣になると、いずれ1人で本が読めるようになったとき、話の表層だけをなぞるのではなく、「自分なりの感想」を持つようになります。つまり、「考えながら情報に接すること」が脳の中で習慣化されます。のちにこれが「自分で考える力」の礎になります。
この読み聞かせの手法を、「ダイアロジック・リーディング」といいます。
小学校の夏の課題でもっとも子どもが嫌がるものは何でしょうか。宿題や日記ではありません。
読書感想文です。
では、書き方も教えてもらっていないのに、「読書感想文を書きなさい。」と言われたらどうするでしょうか。おそらく、つたない言葉を極限まで紡ぎ合わせ、活用して本のあらすじを書く、という行動に出るはずです。「あらすじを書かず、感想を書きなさい。」と言われてもそれだけでどうやって原稿用紙数枚分を埋めるのかという苦しみにもだえることになります。
それもそのはず、日常的に「思考力」「伝える力」を伸ばす訓練を行わない日本の初等教育では、自分の考えを発表する機会がないからなのです。
ちなみに、修英塾では読書感想文の書き方指導、添削指導も行っており、それを受けて学校や市、県から表彰された、という子どももいますが、それはまたさておき。
今回は、賢い子に育てる「最高の読み聞かせ~初級編~」という題でブログを書きました。
実は、ダイアロジック・リーディングはかなり研究されており、まだまだ奥が深いのですが、今回はここまでにして、発展レベルのものは次にしたいと思います。